過去の受賞(連載決定)作品

「どんな作品を応募してみればいいか分からない!」「この作品を応募するとどんな見方をされるの?」「応募前に作品をもう一段階レベルアップさせるアドバイスがほしい!」という人のためのヒントとして、これまでGIGAZINEマンガ大賞で連載が決定した作品について、どのように審査で評価されていたのか審査コメントとともにお届けします。

ガス屋で~す!

毎日日毎「ガス屋で~す!」マンガ作品応募

▼あらすじ
町のガス会社「星見生活整備株式会社」に就職したばかりのキユは、コワモテのお客さんとの見積もり話で右往左往していた。同行した先輩に助けられつつ初めての契約を成立させたキユは喜びに包まれながら、仕事の意義を感じていく。

▼編集部講評
最初に1話を読んだ時、そのまま載せてもいいくらいの出来だったが、「このノリで1冊分以上のネタを出し続けることができるのか?」という疑念があったのも事実。そこで、続く課題として追加のネタ出しをしてもらったが、その結果盛りだくさんのアイディアと企画を送ってもらったのに加え、それぞれのプロットも職業ネタをコアにしつつ話自体の面白さを加えていこうという明確な意志が見えたので、安心したという流れ。知識ないし調べた情報としてどういう強みがあって、どう面白く仕上げるか、読者にどう感じてもらえるか、という「プレゼンテーション能力」が確かなアピールとしてありました。
ただ、少し専門的なお仕事もの+豆知識という構成が強みでもあるものの、どうしてもその職の広告宣伝マンガっぽさも感じてしまうので、情報の出し方などに工夫ができるとなお良いです。

▼審査員コメント
専門的な情報と、お仕事ものとしてのドラマとがうまく繋がっていないように感じる点があったので、人間模様と主人公の成長にガス屋ならではの展開を絡めるバランスに気を付けることと、画面作りを情報が多すぎたり時系列が分かりにくかったりしないように意識して描くとより良くなるのではないかと思いました。
良くできていますがどうしても地味な印象はあるので、よりマンガっぽさを出すキャラクターだったり、いっそのことファンタジーな舞台での職業話にしたりするとお話の幅も広がるかなと。どちらにせよ、ドラマ部分の強調は工夫として必要に感じます。

森野 作画応募
※作画部門では、最初に送ってもらったポートフォリオで審査を行った後、ショートストーリーのマンガ脚本から作画していただいたもので改めて審査を行いました。

▼編集部講評
「ネーム作成&カラー作画」「イラスト」「キャラクターデザイン」の3課題を提出いただきました。ネーム&作画は単純に完成度が高く、ネームをきっちり勢いをとどめたまま最終的な形にできる点が高評価。良く言えば自分の得意な舞台に落とし込んで仕上げるのがうまいですが、悪く言えば個性や得意不得意がハッキリしていて脚本のジャンルや雰囲気を選びそうに感じました。得意な方法で突き進むのも良いですが、新しいことへの挑戦も続けてほしいです。
また「実際にやっていけるか」という点、スケジュールへの対応や普段の連絡、フィードバックの対応など、プロとして求められる要素の上に、「自分だけが描ける絵」が乗っかれば最強になれるはず。マンガはとにかく勢いが大事なので、この勢いを保ったまま、レベルを上げて殴りに行ければ、無敵でしょう。そうなれる可能性を感じさせてくれるかどうかというのが非常に重要で、その部分をクリアしているのが評価ポイントになってます。

「とにかくイジメたい朝日奈さん」

じゅんた「とにかくイジメたい朝日奈さん」マンガ作品応募

▼あらすじ
大富豪の一人娘である朝日奈ひかるは、幼少期からずっと一緒の夜橋ゆうひにちょっかいばかりかけていた。机に落書きしたり、怖い犬をけしかけたり、購買のパンを買い占めたり。しかしその裏には、ゆうひを愛するひかるの遠大な野望があって……?

▼編集部講評
まず圧倒的な画力。頭身が高い美しいキャラの絵ではないものの、個性的でかわいらしく安定感がすごい。「キャラクター」「画力」「シナリオ」のどれかがよければ連載の形が見えますが、どれも高水準で満たしていたと思います。展開的にはベタベタでもオチに変化を付けて工夫されているのがちゃんとわかるし、二人の主要キャラクターの性格や関係性が1話で分かるようになっていたり、キャラのデフォルメ具合と全体の雰囲気がうまく統一されていたりと、読みやすくわかりやすいのも評価が高い理由。ただし、連載を考えた時の構成や見せ方にさらなる工夫の余地があったのと、第1話から第2話で肝心のかけあいやギャグの手数が大きく減ってしまったので、このノリでどこまで継続できるかという部分に力量が問われるので期待したいです。

▼審査員コメント
よく考えると重い設定なところもサラっと展開していく読後感にいい持ち味を感じました。審査の1話と2話までで導入としては面白かったけれど、すでに4コマの流れとオチがワンパターンに感じる点も少しありました。また、メインとなるキャラクター2人とそれに関わるサブキャラという構図ながら、設定上メインキャラ2人がわりとディスコミュニケーションなので、そこは見ていて物足りなさも感じました。キャラ2人のやりとりでもっと愛を感じられるようにしたり、二人の仲の良さや朝比奈さんのデレの面を出してあげれば、よりほっこり感を感じると思います。作画の面では、表情にもっとバリエーションがあるともっと良くなると思いました。

miyazono

すこやか「秘密の宮園」マンガ・ネーム応募作品

▼あらすじ
「友達ができない体質」の宮園花音が出会った、自分と同じ名字を持つ少女・宮園凛音。凛音は宇宙飛行士として活躍するために開発されたアンドロイドだと名乗り、その活躍の見返りとして「誰か好きな人と結婚してアンドロイドにする」ことを認められていた。花音とは真逆の、明るくて行動的で笑顔を絶やさないアンドロイドの凛音が、花音の人生に大きな渦を巻き起こしていく。

▼編集部講評
完璧に完成されているマンガではなくても、キャラクター、画力、シナリオ、何かひとつ満たしていればよいものが出来上がる未来が見えてきます。この作品はとにかく、ほのぼのした展開に強いSF設定を挟み込むタイミングや見せ方だったり、導入からフリとオチの見せ方だったり、物語の「構成力」が強い。また、キャラ同士の基本的な掛け合いがテンポのいいボケとツッコミとして機能していて、展開的には退屈にさせてしまうフリの部分でも「勢い」があって読ませる力がありました。

▼審査員コメント
SF設定が強めながら、全体的にSFっぽさを感じさせないとっつきやすさが良かったです。キャラクターのフェチ的な部分に注力して描ければもっと良くなると思います。セリフや行動が勢い重視な分、説明する情報の順序や取捨選択、ターゲットとなる読者を想定した展開や感情の動き、を意識できるとよいかなと思います。

トラ太郎「あめあめふれふれうそやんで」ネーム応募作品

▼あらすじ
雨を愛する少女・奈緒(ナオ)が出会ったのは、暗い顔をした転校生・海唯(カイ)。止まない雨とともにやってきた、「雨が嫌い」と突き放す海唯は、世界に「人災」をもたらす「雨男」だった。生まれてから一度も太陽を見たことがないという海唯の心を晴らすべく、奈緒は海唯の手を取って走り出す。

▼編集部講評
「雨男」を軸にした設定と物語が、SF的でもファンタジー的でもあって単純に面白い。また、会話が続くシーンの絵的な見せ方とか、「決め」のシーンまでのコマ割りとか、映画監督のような演出面がズバ抜けていました。派手なギミックや分かりやすいポップさは欠けるものの、シナリオは安定していて「雨」という情景にも普遍的な力があるので、読んでさえもらえれば評価をもらえる強い作品だと思います。

▼審査員コメント
白黒ネームだけで問題なく読めるくらいによくできていました。ただその一方で、フルカラーになったときの「1枚の魅力」の意識は欠けているように感じるため、ストーリーを伝える絵というだけではなく「見るだけで魅力的な絵」を入れるようにできるとよいと思います。話が濃くなっている反面、1ページ内にコマを詰め込む傾向にあるので、すっきり読みやすくする意識のほか、1話ごとに見せ場や山場を作るのが大事になってくると思います。

yushachiku

つまびく「勇者で社畜の兼業ライフ」(応募時タイトル『最弱勇者、ゲーム会社の社畜を兼業して最強に!!』)原作脚本応募作品

▼あらすじ
魔物がはびこる世界・コナムのダメ勇者、クズール。厳しくも頼もしい仲間たちの助けもあってなんとか魔物退治を続けていたクズールは、今なぜか日本のゲーム会社で働いていた。愛すべき仲間たちとは離ればなれだけど、ここには魔王も魔物もいない。代わりにあるのは積み上がる仕事と目がうつろな同僚と魔物より怖い上司と……あれ、こっちのほうがしんどくない? しかし、クズールを待ち受ける本当の地獄はここからだった――!

▼編集部講評
設定は一見すると流行の型でベタですが、そこにオリジナルに伝えたいこともやりたいことも強く組み込まれていて、起承転結もしっかりしていて連載のイメージができました。キャラクターは少ない描写の中でも魅力的に造形できていて、エピソードや小ネタの部分はベタやパロディに偏りすぎず自身の経験や知識から膨らませていて読み応えがあります。
ただ、プロットは優れている一方で、1話脚本は小説形式すぎてマンガの原作に合わなかったため、「審査としては入賞まで進めないが、打ち合わせして連載へ」という形になりました。

ouboyumeki

ゆめき 作画応募
※作画部門では、最初に送ってもらったポートフォリオで審査を行った後、ショートストーリーのマンガ脚本から作画していただいたもので改めて審査を行いました。

▼編集部講評
圧倒的な安定感があり、表現の幅も広い。それぞれのカットは悪く言うとのっぺりした印象をうける時もあるが、決めのシーンはしっかり強く魅力的に描けていて、最低限の文字情報からマンガに起こす形としては理想に近い。
絵柄や好みもあると思いますが、デフォルメしたようなちびキャラはとてもかわいらしい一方で、頭身をしっかりとったキャラクターの一枚絵は改善の余地があるかも。マンガを描く能力は高いので、イラストを何枚か描いてみて、そちらの能力を磨いてみるのも面白いと思います。
コマ割りが少し単調なので演出面をもう少し伸ばしたり、デザインや見せ方から魅力的なキャラクターを産めるようになったりできるとさらによく、敵無しになるのでは。

ヒャク 作画応募
※作画部門では、最初に送ってもらったポートフォリオで審査を行った後、ショートストーリーのマンガ脚本から作画していただいたもので改めて審査を行いました。

▼編集部講評
ポートフォリオで送っていただいたイラストは二次創作・オリジナルともにレベル十分で、メカや武器などをよく描いていて引き出しが多いのもポイントが高い。
キャラクターの絵がとにかくかわいくて、今風な絵柄でもありウケやすいと感じました。キャラクターの絵には文句の付け所がない一方で、テキスト脚本からマンガに起こした時のコマ割りは少し苦手な印象で、縦横に平行に区切るだけでもう少し工夫がほしい。それを補って余りある絵の力はあるので、数さえこなせばめきめきレベルアップしていくのが見てとれます。