A:まず紙の本のメリットは、紙をまとめた書籍として、紙の手触り、インクの匂い、重さを持って「物理的に存在している」ことそのものです。マンガに限らず書籍は新しく印刷する、重版する時に表現を修正したり、削除したりすることがありますが、一度刷られた本に上から印刷し直したり、シールを貼って修正するということはほとんどありません。手放さない限り、印刷されたままの表現をずっと楽しむことができます。また、博物館に1000年前の巻物が現存して展示されているように、保存状態に気を配れば長く残す事が可能ですし、多少水浸しになってもリカバリーの方法次第でほとんど損傷なく読めるようにすることができます。ページを検索する場合に、アプリを開いてスライダーを操作するのではなく、直感的にページをめくって探す事ができるという点もメリットでしょう。

紙の本のデメリットは、やはり「物理的に存在している」点です。多くの本を置けば置くほど、本棚が増え、本棚から本を探す手間が増え、本を置いた床が沈んでいくことでしょう。また、多くの本を持ち運ぼうとして鞄に入れれば入れるほど、手や肩に負担がかかります。一度火に巻かれるとなすすべなく灰になってしまいますし、大きな地震があった時は、対策不足の本棚や積まれた本が崩れて命の危険にも繋がります。

一方、電子書籍は「物理的に存在していない」ことがメリットと言えます。スマートフォン・タブレットやKindleといった端末の容量が許す限りデータを入れられるので、紙の本で20kg分の書籍が200g程度の端末に納まってしまうこともあります。携帯性では圧倒的と言えるでしょう。キーワードで検索すると、当てはまる部分をすべて参照することができるので索引がない本でも楽に目当ての箇所を見つけることができます。文章は文字の大きさや行の間隔を自分好みに調整できますし、マンガや料理本などの画像データは拡大縮小ができます。端末次第ではありますが、紙の本以上の大きな画面でマンガを読めるのは、電子書籍の大きなメリットと言えるでしょう。

そんな電子書籍のデメリットもまた、「物理的に存在していない」点だと言えます。本のデータは、データを販売している電子書籍ストアと結びついているため、例えばKindleストアで購入した書籍はKindle端末、アプリでしか読むことができません。また、出版社や権利者の問題で書籍自体が絶版となった場合は、書籍データを新しくダウンロードし直すことができません。端末にダウンロードされていた場合はセーフですが、誤ってデータを削除したり、端末が壊れてしまった場合はアウトです。電子書籍ストアにログインできなくなったり、サービスが終了した場合は、そのストアで購入した電子書籍の全てが読めなくなる可能性もあります。画像データの作成は権利者や出版社に一任されているため、紙の本では問題なく読めたマンガの見開きが電子書籍ではズレてしまっていたり、画像データが荒くてスマホでは問題なく読めても、タブレットではガビガビに見える、という悲しいケースも。

また、端末は年々新しいバージョンが発売されて入れ替わりが早いため、「修理用のパーツが残っていないため修理できない」「ファームウェアのアップデート対象から外される」という事も十分ありえます。

全体として、保存性では紙の本、携帯性では電子書籍にメリットがあると言えます。両方のメリット・デメリットを踏まえて、自分のライフスタイルや、本を読むタイミング、自分にとってずっと手に取れるようにしておきたい本なのか、という点を考慮して選ぶのがよいでしょう。もちろん、紙の本と電子書籍の同じ本を両方買うという選択肢もアリです。